タイの労務管理について

タイの労働法(2021年版)/ 知っておくべき要点まとめ

タイに進出する日系企業

現在、タイにある日系企業の数は増加の一途をたどっており、

平成29年10月1日時点で3,925拠点あると言われています。

平成29年10月1日時点で海外に進出している日系企業の総数(拠点数)は,7万5,531拠点で,前年より3,711拠点(約5.2%)の増加となり,過去最多を更新しました。国別では中国3万2,349拠点(約43%),米国8,606拠点(約11%),インド4,805拠点(約6.4%),タイ3,925拠点(約5.2%),インドネシア1,911拠点(約2.5%),ベトナム1,816拠点(約2.4%)の順となっています。

海外在留邦人数・進出日系企業数の調査結果
(平成30年要約版)より

そんな日系企業、駐在員が注意しなければならないのがタイの労働法です。

日本からタイに来た駐在員は日本の労働法に準ずる場合もありますがタイで働く人は、国籍問わず

タイの労働法を元に管理されます。

そのため、現地採用の日本人やタイ人のスタッフを管理するにあたって、タイの労働法を

理解することは必要不可欠です。

今回はそんなタイの労働法についてご案内します。

<目次>

  • タイ人を雇用する上での注意点

    タイの労働環境について何も知らない方は、働き方の多くに不安を覚えるはずです。

    タイで日系企業をマネジメントする場合や、駐在員などはどのような働き方をすべきか考えましょう。

    上記にも記載したように、タイで働く人は国籍問わず、すべての人が原則タイの労働法に則らなければなりません。

    しかし、駐在員の場合は日本の雇用契約に準じる場合が多いです。

    例えば、給与に関しては日本の契約を、勤務時間はタイの基準をといったような形です。

    タイの労働法を

    これらは、主に労働法がどう適応されるのかについてですが、ここからタイの労働環境を詳しく把握することで現地での経営や職場環境の改善に大きく役立てましょう。

    様々な労働法

    【労働基準関連法まとめ】
    ■労働基準関係法令
    雇用関係については、労働者保護法が基本ルールになっており、自由な契約に委ねつつ、弱者保護の観点から、労働者の保護を図ることとなっています。具体的な法令としては、「労働者保護法(2008)」「タイ民法・商法典第3編第6章 雇用に関する規定」「職業紹介及び求職者保護法(2001年)」などがあげられます。

    これらの法令は、労働契約、解雇、賃金、労働時間、休暇、超過勤務、休日労働、超過勤務の割増賃金、若年労働者、女性労働者、少数民族労働者、外国人労働者、安全衛生、外部委託の基準、就業規則などについて規定してあります。

    ■対応する法律と管轄表
    《労働基準に関連する法規》

    法律 管轄
    労働者保護法2008年,2019年改正 労働者保護福祉局
    タイ民法・商法典第3編第6章 雇用に関する規定575~586条」 労働省
    職業紹介及び求職者保護法(2001年) 雇用局

    《労働管理に関連する法規》

    法律 管轄
    労働関係法 1975年 労働保護福祉局
    国営企業労働関係法 2000年 労働保護福祉局

    《職業就労に関連する法規》

    法律 管轄
    外国人労働法2008年 雇用局
    外国人就労を禁ずる仕事及び職業を定める勅令 1979年 雇用局
    入国管理法 1979年 入国管理局

    《労働技能開発に関連する法規》

    重要・基本の労働法まとめ

    法律 管轄
    技能開発促進法2002年 技能開発局
    タイ労働基準の証明基準及び方法に関する労働保護福祉局規則2003年 労働保護福祉局
    労働時間 1日の労働時間は8時間、1週間で48時間「早く仕事を終えた日の分の時間を別の日に付け足すことは可能です。ただし、1日の労働時間を9時間は超えてはいけません。定めた時間以外は残業になりますので注意が必要です。
    休憩時間 連続して5時間以上の労働を行う場合は1時間以上の休憩が必要になります。
    時間外・休日労働時間について 1週間に36時間を超えてはいけません。
    休日 週1日以上の休日。日給制・出来高制については週休日、無給とすることができる
    祝日 年に13日以上の祝日、祭日。タイの祝日についてはこちら
    年次有給休暇 1年継続して就労した労働者は1年間に6営業日以上の年次休暇を獲得する権利を有します。また、年内に消化しきれなかった休暇は、翌年に持ち越すか休日労働扱いとして賃金の支払いを行うことが可能です。また退職時には有給休暇分の給与を支払います。
    時間外労働と割増賃金 時間外労働時間:1.5倍・深夜労働・休日労働2倍 休日時間外3倍 ※時間外労働時間数は、休日労働および休日時間外労働の時間数と合計して週36時間を超えてはいけません。
    給与からの控除の注意 労働者保護法第76条 使用者は次に掲げる場合を除いて、賃金、時間外勤務手当、休日勤務手当または休日時間外勤務手当から控除してはならない。

    下記(1)ー(5)に関しては、それぞれ第70条(給与支払い時期)により定められた支払い時期に労働者が受取る権利のある金額の10分の1を超えてはならず、また、合計額が同じく5分の1を超えてはならない。ただ、労働者の承諾を得た場合を除く。

    (1)所得税、(2)労働組合の納付金、(3)協同組合の納付金
    (4)第10条に定める保証金、または労働者の故意または重大な過失により生じた使用者に対する損害賠償金。ただし、労働者の承諾を得なければならない。
    (5)積立基金

    労働者保護法第77条 使用者が労働者から承諾を得なければならない場合、または、第54条および第55条に定める金銭の支払い(タイの通貨にて、就労場所にて支払う)、または第76条に基づく控除を行うため労働者から承諾を得る場合、使用者は文書により明確に労働者の承諾、同意を得て、労働者に署名をさせなければならない。

    試用期間 タイの試用期間は採用から119日以内が一般的です。試用期間では、本採用に至る前の仮の状態であり、会社は解雇保留権つまり解雇する権利を持っています。試用期間中に納得のできる働きに値しないとき解雇を定めていれば、解雇しても不当解雇にはなりません。ただし、注意しなければならないのが期間内であったとしても、解雇あるいは退職する場合、雇用主と労働者の双方が1ヶ月前までに通告する義務があります。日本のアルバイトで1ヶ月前までに通告しなければならないのと同じです。
    退職金 法律上の規定はないが、福利厚生として退職金給付制度(プロピデンロファンド)を採用している企業があります。積立金は支払いの15%以下であれば費用として処理することができ、法人税の適応外です。労働者は自己積立分、会社の積立分、および積立金の運用による収益分を非課税で受け取ることができます。
    一時休業 事業主の都合で一時的に事業の一部または、全てを停止・休業する際は労働者に休業開始時の給料の75%を支給する必要があります。
    会社の理由での解雇 (1)事業の移転による理由
    30日以上前の事前通告義務があり、新事業所で働くことを望まない労働者に対しては特別解雇手当を払います。
    (2)業務縮小、機械導入、機械更新等による労働者の削減を理由とした整理解雇の場合。
    1, 60日以上前に労働者へ解雇理由と解雇日を告知し、労働省の労働監督官の届出が必要となります。(事前告知がない場合はペナルティ、賃金60日分)
    ※解雇の人選に合理性・妥当性がない場合は不当解雇として訴えられた場合に会社側が敗訴すること。
    2, 告知した場合であっても、118条の解雇補償が発生します。
    3, 6年以上の勤続者には勤続1年あたり15日分以上の解雇金を通常の解雇手当に上乗せして支払う必要があります。
    解雇可能な事由 解雇補償金を支払わずに解雇できる場合(保護法119条、労働者に非がある場合)。以下のケース参照。
    ・職務に対する不正、使用者に対し故意に刑事犯罪
    ・使用者に故意に損害を与えた場合
    ・就業規則に違反をした場合
    ・正当な理由なく、3日連続して職務を放棄した場合
    ・最終判決により禁固刑を受けた場合
    解雇不可能な事由 (1)妊娠を理由とした解雇
    (2)労働組合員であることがを理由とした解雇
    (3)労働運動を理由とした解雇
    (4)労働者委員会の委員は労働裁判所の許可なしには懲戒、解雇できない
    規定内の雇用契約の場合 給与期間以上前、または契約に定められた期間前に通知する義務がある。
    解雇手当 事業者は労働者に対し1給与期間前に通告する必要があり即時解雇の場合は、事業者は解雇手当の他に雇用報酬を支払う義務があります。労働者に非がない場合すべてです。保護法118条2本条では、解雇とは下記に定義づけられます。

    雇用契約終了、または他の理由を問わず、使用者が労働者を以後働かせず、賃金を支払わない行為を指します。使用者が事業を継続することができないため労働者が労働せず、かつ賃金を受け取らない場合を含む。

    勤務期間 手当金額
    120日未満 解雇補償金は必要ない
    120日以上1年未満 退職時の賃金の30日分
    1年以上3年未満 退職時の賃金の90日分
    3年以上6年未満 退職時の賃金の180日分
    6年以上10年未満 退職時の賃金の240日分
    10年以上 退職時の賃金の300日分

    日本とタイの労働基準比較表(簡易版)

    日本 タイ
    労働時間 ・1日8時間
    ・1週間40時間
    ・1日8時間
    ・1週間48時間
    休憩時間 連続して6時間を超えて労働する場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩 連続して5時間以上労働する場合には1時間以上の休憩
    休日 週1日以上の休日 週1日以上の休日
    ※日給制及び出来高制の場合には、週休日は無給
    割増賃金 時間外労働:1.25倍
    ※月60時間を超える時間は1.5倍の例外あり
    深夜労働:1.25倍
    休日労働:1.35倍
    時間外労働:1.5倍
    深夜労働:-
    休日労働:2倍
    ※時間外労働時間数は、休日労働及び休日時間労働の時間数と合計して週36時間を超えてはならない
    年次有給休暇 6ヶ月以上:10日以上
    1年6ヶ月以上
    2年6ヶ月以上
    3年6ヶ月以上
    4年6ヶ月以上
    5年6ヶ月以上
    6年6ヶ月以上
    ※上記期間の出勤日数要件あり
    通常有給の持ち越しは2年間
    ・1年以上勤務した場合に6日以上付与される
    ・1年間で消化できなかった休暇は、労使協議の上、翌年に持ち越すか、休日労働として賃金の支払で代替可能
    ・勤続年数が1年に満たない労働者に対しても、勤務日数に応じて按分した有給休暇が必要
    ・2008年の改正により、退職理由を問わず、使用者は退職者に対して有給休暇分の賃金を支払わなければならない。
    管理職 管理職は時間外及び休日の割増賃金の支払い義務なし 管理職は時間外及び休日の割増賃金の支払い義務なし

    特殊休暇について

    ・傷病休暇(Sick Leave)
    30日まで有給。法定で認められる3日以上連続して休む場合は一級医師の診断書を必要とする。

    ・用事休暇(Business Leave)
    2019年5月5日の改正により年間3日程度で有給となった。

    ・兵役休暇(Military Leave)
    年60日まで有給。

    ・出産休暇(Maternity Leave)
    産前後合わせて98日間、45日間まで有給。子ども手当・社会保険からの出産一時金、あり。

    ・出家休暇(Monkhood Leave)
    法律には定められていないが、タイの一般的な企業では導入している企業が多い。

    ・避妊手術休暇(Leave for sterilization )
    医師が定めた期間は有休となる。

    ・育児休暇
    雇用主との要相談。労働者の場合、通例男性はない。

    まとめ

    以上、タイで働く上で知っておきたい労働法(2021版)と知識でした。現地企業でマネジメントする上で問題が起こらないよう気を付けましょう。
    タイでのマネジメントのご参考に。

     

    給与計算や就業規則をどうすればいいか気になる方、

    よろしければこちらもご覧ください。

    https://payrolljp.jobcan.in.th/tax/thai-payroll-law/

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